こんばんは。
土曜日は、趣味に関する本や雑学収集本です。
色を知って、彩りを深める
暦生活さんの「にっぽんのいろ」シリーズが好きです。和を感じる日本の色の名前や、その名付けに至った背景を知ると、日本語や日本の四季・生活の豊かさがじんわり伝わってきます。
これまでWordの文章とモノクロの図面の世界で翻訳をしてきたからか、大人になってからの方が本を読んでいて色の描写に出会うと、ふわっと脳内が彩られる感覚がある気がします。「ん?これ何色?」と思ったときも、調べるのが全然面倒じゃなくなりました。むしろ楽しい。
本日は、『色の名前事典507』を紹介します。日本の色、世界の色──その名の通り、507色もの名前と由来が紹介されている一冊です。
辞書としても、データ集としても
本書では、たとえば「ピンク系の色」など、カテゴリー別に色が紹介されています。色味が似ている色が隣り合っているので、眺めているだけでも楽しく、整理された印象です。
翻訳においては、元の色があまり知られていない場合、近い色でより一般的な名前に置き換えるのもひとつの工夫かもしれません。
すべての色にRGB値やCMYK値などの色情報が記載されているのも魅力です。絵を描いたりデザインをする方は、これらの数値をアプリに入力することで、理想に近い色をすぐに使うことができます。
さらに嬉しいのが、すべての色に300字程度の解説が添えられていること。色に出会うたびに辞書のように引いたり、たまにパラパラとめくって読んで色の歴史や親しまれ方を知って楽しんでいるところです。
「色」には思いや願いが込められる
いくら似ているからといって、あまりに和の印象が強まってしまう色を使うのは考え物なのも確か。なのでわざわざ日本の色を知らずともカタカナや基本色でいいのではという意見も分かります。
ただ、個人的にはたとえ翻訳に関係しなくても色の豊かな世界には触れ続けていたいです。
印象的だったのは、2019年10月に行われた天皇陛下即位の儀式のひとつ「即位礼正殿の儀(そくいれいせいでんのぎ)」での、麻生元総理の妻・ちか子夫人のドレス姿です。
常盤色(ときわいろ)のロングドレスに白い手袋で扇子を持つお姿は、お似合いだったのはもちろん、まさにこの儀式にふさわしい意味や願いが込められているとSNSでも話題になっていました。
外国語や翻訳が絡まなくても、意味や願いを込めた装いができる大人になりたい。そんな願いも込めつつ本書の「常盤色」を引用して、本日はここまで。
日本語の常盤色は英語のエバーグリーンと同じ意味合いの濃い緑の美称なのだが」、英語のように永遠の若さに対する憧れはない。長い歴史を生き抜いてきた神秘的な生命の力に対する畏怖の念が籠められているように見える。常盤色は松や杉などの常緑樹の老木の深い緑を表わす。「新古今和歌集」のよみ人知らずの一首にもこんな歌がある。
常盤なる末にかかれる苔ならば
年の緒ながきしるしとぞ思ふ
常夏の国には常盤色のような色名はない。
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