こんばんは。
土曜日は、趣味に関する本や雑学収集本です。
翻訳の前に、その文書に親しみたい
例えば、ユーザーマニュアルを翻訳するなら、まずはソース言語で書かれたマニュアルと、ターゲット言語で書かれたマニュアルそれぞれに親しむことが重要。このアプローチを使ってこれまで少しずつ翻訳分野を広げてきました。
それなのにそのアプローチが唯一出来なかったのが吹替翻訳でした。日本の吹替台本はクローズドな世界のようで、お手本は翻訳学校から貰うフォーマットやサンプルのみ。先生たちが嘘をついているとは思わないものの、記号の書き方など「本当にコレ現場でも使っているのか?」と実際の使用現場やドキュメント全体がイメージしきれず、課題に取り組むときも雲をつかむ感じでした。
本日は『声優の教科書: 基礎編からプロでも役立つ実践編まで』を紹介します。「抵抗があるけどやっぱりフリマサイト? う~ん……」と悩んでいた中で「声優さん向けの教材をまず読んでみよう!」と思い立ち手にした一冊です。
本書は約四半世紀前の2000年発売です。カセットテープに録音して聞き直しましょうといった機器的な古さはあるものの、手法自体はおそらく今の時代の声優さんにとっても古くなさそう、さらには翻訳者にも通じる重要なポイントがいくつもありました。
ト書きで本当に声は変わる!
さて、本書を読むキッカケとなった記号たちでしたが、ありましたONやOFFやSEが! バック(B)がなかったのと、記号の入り具合は少な目だったのは時代的なものでしょうか。とにかく、声優さん側も親しむ記号なんだとようやく腹落ちし、なんだか嬉しかったです。
(※ON:話者の口元が映っている、OFF:話者が画面にいない、SE:登場人物の口以外から発される音、バック(B):話者は画面にいるものの口元が映っていない)
そして、ト書きの重要性も改めて感じた読書体験でした。特に前半の基礎編では掲載されている文章をまずはト書きを見ずに読んでみて、その後にト書きを読んで再度読むエクササイズが推奨されています。
試しにいくつか自分でも声を出して読んでみたのですが、ト書きを読んでから再度読んだときに前よりも情感がこもっていてビックリしました! 「手をかざして」「手を下げて」も実際に手を動かしながら読むことでの違いに気づくことができ、ト書きを丁寧に書こうというモチベーションにもなりました。
役者の教科書から訳者も学ぶ
「訳者は役者」とたまに言われますが、本書でのアプローチは翻訳者としても参考になる部分がたくさん。作品を理解することの重要性を改めて教えられました。
役作りをするためには、まず「役を知る」ことが大事です。
「5W1H」を使って、ドラマや文章を読み取るようにと推奨しています。そして、「セリフにない「5W1H」の要素は無理して入れることはない」というのも翻訳にも通じる大事なポイント!
基本設定をベースにさらに登場人物の性格をより深くつかんでいくアプローチも参考になります。
たとえば「明るく」から、「明るく元気だが、弟が悩みの種。理に合わないときは、突然怒り出す正義感もある。また涙もろい一面もある」ぐらいは読み取りたいですね。(中略)
もし基本設定がない場合は、それも台本上から読み取り、書き出しましょう。 その役のエピソードなど、気になったことを自分なりにメモをとったり、ほかの人物との相関図を作っておくのもいいかもしれません。
最後に、ドキッとしつつ、でもそれが求められるからこそ楽しいんだろうなと思った教えを引用して、本日はここまで。
最終的に俳優(声優)を支えるのは「感性」です。 「感性」を豊かにすることをくれぐれも忘れないように。
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