こんばんは。
月曜日は、英語や日本語に関する本です。
英語の句読点を笑って学ぶ、ユーモアの書
アポストロフィー、コンマ、コロンにセミコロンなど。そうした英語の句読点の使い方である句読法(くとうほう)、皆さまは自信がありますか?
今日は『パンクなパンダのパンクチュエーション―無敵の英語句読法ガイド―』を紹介します。先週紹介した『翻訳地獄へようこそ』で紹介されていて「これは!」と早速購入した、一冊丸ごと句読点に関するエッセイ集。参考文献が載っている書籍は信頼できるし、読みたい本も増えて嬉しいです。

思えば、学校ではあまりしっかりと教えられなかったような。だからか、日英翻訳ではネイティブチェックによる句読点の修正をよく見ます。本書を読んで、これまで見たネイティブチェックによる修正への理解が深まったように思えました。
ただ、とりあげる誤用例文の面白さに加えて著者の文章も面白い! 訳者まえがきにも「これはユーモアの書である」と紹介されている通り、真面目なお勉強本というよりは楽しく読んでいるうちに句読法を強化できる一冊でした。
”Eats, Shoots and Leaves”
さて、本書の原題は”Eats, Shoots and Leaves”。邦題では『パンクなパンダの〜』となり、帯には「そのコンマは不要よ! 何度言ったらわかるの?」とコメントが。
何を指しているか分かりましたか? 裏表紙の解説はこちら。
パンダが1頭、カフェでサンドイッチを食べている。
突然拳銃を取り出し、天井に向けて2発撃つ。
パンダはそのまま出口へ向かう。
わけがわからなくなったウェイターが「どういうことです」と訊く。
パンダは野生動物解説書を投げて寄こし、「俺はパンダだ。」と言う。「読んでみな。」
ウェイターは該当する個所を読んで、納得する。
“Panda. Large black-and-white bear-like mammal, native to China. Eats, shoots and leaves.”
(【パンダ】黒と白の体色を持つ熊に似た大型哺乳類。中国原産。食べ、撃ち、立ち去る。)
パンクなパンダですね〜(笑)。
蛇足で解説すると、”Eats shoots and leaves”とコンマなしなら、shootsは「芽」で、leavesは「葉っぱ」に。Eatsの目的語の名詞となります。私たちがよく知る、芽や葉っぱを食べる可愛いパンダです。
それがEatsの後にコンマを入れてしまったので、shootsは「撃つ」で、leavesは「立ち去る」に。Eatsと同列の動詞の命令形となりました。どこで入手して使い方も覚えたのか、拳銃をぶっ放すパンクなパンダのお出ましです!
こんな例が盛りだくさんで本当に楽しい。間違いにすぐ気付けなかった文は悔しかったりもしましたが、その分笑って身についた感触があります。
そして、このshootsとleavesの間にコンマを入れるか問題(オックスフォード・コンマ)にも結構なスペースを割いていて、かなり面白い。テクニカルライティング出身者としてはコンマは入れたい派なのですが、皆さまはどちら派ですか?
誤用を翻訳しないといけないときも
本書は翻訳された英語に関してと言うよりは、最初から英語として書かれたはずの英語に対してぶった斬っている本です。
そのため、句読法の誤用によって書き手や書き手が表そうとしている人物のキャラ付けを、翻訳に反映させる必要があるときにも役立ちそうです。
小説などの中で、会話の部分にアポストロフィを無闇にたくさん(多くの場合、変わった大文字使用と一緒に)使うのは、その話し手が貧農、ロンドンの下層民、頑固な英国北部方言使用者であることを示すのが慣例になっている。
時代性もあって、こういった描写傾向は減っていくのかもしれませんが、翻訳者としては知っておきたいところですね。
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本書を読み終わったら、ピリオドでなく「フルストップ」を使いたくなりました。これはそのうち原書でも読みたいし、元となったラジオ番組「Cutting a Dash」もどうにかして聴きたい!
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