こんばんは。
水曜日は、小説、エッセイ、漫画本です。
「こんな読書ブログが書きたい!」と思った一冊
本日は、『名作なんか、こわくない』を紹介します。小説家の柚木麻子さんによる本書は、57の名作の読みどころと柚木さんご自身のエピソードを織り交ぜた読書エッセイです。
読んでいて思ったのが、「こんな読書ブログが書きたい!」ということ。本ブログでは、水曜日に小説、エッセイ、漫画を紹介するシリーズを続けていますが、ネタバレを避けつつ魅力を語る難しさに悩んでいました。そんな中、同じように対象作品の一部を引用しつつも、完全なネタバレを避け、読者を引き込むエッセイに仕上がっており、思わず嫉妬してしまうほどでした。
先日ご紹介した『つい他人と比べてしまうあなたが嫉妬心とうまく付き合う本』にもあるように、嫉妬は潜在意識が願望と可能性のサイン。つまり、「こんな読書ブログが書きたい!」と気づけたことはラッキーなのかもしれません。

これを機に、柚木さんの筆運びを参考にしながら、自分のエピソードを絡めたり、時代や国が異なる作品やファンタジー作品ではより身近な例に置き換えたりする工夫を、水曜日の投稿で意識していきたいと思います。
小説家による、「愉しめる名作案内」
読み進めていくうちに、次はどのような導入で来るのかと楽しみになってくる本書。読者に読み進めてもらうためには、最初のツカミがいかに重要かを改めて感じます。
夏はすぐそこだが、相変わらずいっこうに痩せない。ダイエットを始めて一カ月。ジムでせっせと自転車をこぎ、白米から玄米に切り替えても、たったの五十グラムしか減らないのは一体どうしたことだろう。ああ、だんだんやる気がなくなってくる。そもそも運動は嫌いだし、バターたっぷりの焼き菓子やどぎつい色のグミキャンディがなによりも好きなのに・・・・・・。そんな自分にカツをいれるべく、ジョルジュ・サンドの『愛の妖精』を選んでみた。邪道かもしれないが、私はこの名作を、恋愛小説というより美容小説として楽しんでいる。
なぜ「美容小説」なのか、ぜひ本書を手に取って確かめてみてください!
そして、古典や名作の厄介なところは、現代の私たちと大きく価値観が異なる点があること。特に、男女感や階級意識などが出てくると一気に距離を感じます。しかし、柚木さんの語り口を通すと、そんな名作たちがぐっと身近に感じられます。
しかし、ジュリアンが彼女達への恋心を富裕層への嫉妬とごっちゃにするせいで、この三角関係はちっとも甘くなく、プロレスでも見ているみたいだ。せっかく美女二人にモテていても、ジュリアンには余裕も自信もゼロである。
「お高くとまった金持ちの女なんかに、負けてたまるか! 惚れさせてやるぞお。コンチクショー」と奥歯を噛みしめるかのような描写は、ちょっと笑ってしまいそうになる。
名作というと、高尚な感想を持たなければいけないと身構えてしまうかもしれませんが、本書は「こんなふうに楽しんでいいんだ。本当だ、こわくないや」と気づかせてくれます。ジュリアン、頑張れ(笑)!
仏・日・英・米、たっぷり57作品
フランス文学編、イギリス文学篇、アメリカ文学篇はそれぞれ12作品、日本文学篇は21作品。本書では合計で57作品が紹介されています。すでに読んだことのある作品も、タイトルだけ知っていた作品も、本書で柚木さんのエッセイを読むと改めて興味が湧いてきます。しばらく水曜日のネタ本には困らなさそう!
名作と言われる作品は、Kindle Unlimitedなどでリーズナブルに読めるのも嬉しいですね。『アップルパイの午後』は、以前ご紹介した戯曲デジタルアーカイブで読めます。

最後に、57作品の一覧を引用して、本日はここまで。
(タイトルと作家名の表記は本書の目次にあわせています。)
フランス文学篇
『女の一生』ギ・ド・モーパッサン
『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フロベール
『谷間の百合』オノレ・ド・バルザック
『女房学校』モリエール
『危険な関係』コデルロス・ド・ラクロ
『居酒屋』エミール・ゾラ
『ナナ』エミール・ゾラ
『クレーヴの奥方』ラファイエット夫人
『愛の妖精』ジョルジュ・サンド
『マノン・レスコー』アベ・プレヴォー
『テレーズ・デスケルウ』フランソワ・モーリアック
『赤と黒』スタンダール
日本文学篇
『放浪記』林芙美子
『悪女について』有吉佐和子
『流れる』幸田文
『おはん』宇野千代
『隣の女』向田邦子
『返事はあした』田辺聖子
『鮨』岡本かの子
『甘い蜜の部屋』森茉莉
『富士日記』武田百合子
『アップルパイの午後』尾崎翠
『女の勲章』山崎豊子
『お嬢さん放浪記』犬養道子
『鬼龍院花子の生涯』宮尾登美子
『幻の朱い実』石井桃子
『二十四の瞳』壺井栄
『氷点』三浦綾子
『午後の踊り子』鴨居羊子
『ヌマ叔母さん』野溝七生子
『夏の終わり』瀬戸内寂聴
『花物語』吉屋信子
『女坂』円地文子
イギリス文学篇
『高慢と偏見』ジェイン・オースティン
『お菓子とビール』サマセット・モーム
『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ
『嵐が丘』エミリー・ブロンテ
『ジェイン・エア』シャーロット・ブロンテ
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル
『大いなる遺産』チャールズ・ディケンズ
『ダロウェイ夫人』ヴァージニア・ウルフ
『日の名残り』カズオ・イシグロ
『春にして君を離れ』アガサ・クリスティ
『ハワーズ・エンド』E・M・フォースター
『1984年』ジョージ・オーウェル
アメリカ文学篇
『緋文字』ナサニエル・ホーソーン
『風と共に去りぬ』マーガレット・ミッチェル
『若草物語』L・M・オルコット
『この楽しき日々 ローラ物語3』L・I・ワイルダー
『白鯨』ハーマン・メルヴィル
『キャロル』パトリシア・ハイスミス
『怒りの葡萄』ジョン・スタインベック
『エイジ・オブ・イノセンス』イーディス・ウォートン
『グレート・ギャツビー』F・スコット・フィッツジェラルド
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』ジェームズ・ケイン
『遠い声 遠い部屋』トルーマン・カポーティ
『ガープの世界』ジョン・アービング
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