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【読書記録133】『総理通訳の外国語勉強法』

こんばんは。
月曜日は、英語や日本語に関する本です。

24歳からアラビア語を学んで総理通訳に

本日は、中川浩一著『総理通訳の外国語勉強法』のレビューです。

外務省への入省が内定した後、著者はそれまで全くノータッチだったアラビア語の担当になると知らされます。

アラビア語といえば、書き言葉と話し言葉が全く別の言語とされる「言文不一致さ」などから、世界最難関の言語とも言われるそう。

以前の投稿で紹介した『事典世界のことば141』のアラビア語のページを改めて読んでみたところ、「1つの動詞が合計162も変化する」とあり、思わずくらくらしてしまいました……。

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そんなアラビア語を、留学経験のない“純ジャパ”の著者が24歳から学び、最終的に総理通訳を務めるまでになった──そんな外国語習得法を紹介する一冊です。

大人の外国語学習は「日本語脳」でOK

外国語学習では、「ネイティブ脳になること」の重要さがよく語られています。たとえば、日本語を介さずに直接外国語で考える、ひたすら聞き流して外国語に慣れる、などのアプローチですね。

ですが本書では、幼児期であればその方法も有効かもしれないが、社会人になってからの語学習得には、むしろ「日本語脳」であることが重要だとし、下記の学習法を提唱しています。

・まず、「自分は何を伝えたいのか」を母語である日本語でしっかり考える
・そのうえで、日本語をベースに外国語のスピーチを作る
・それを第三者に聞いてもらい、とことんダメ出しを受ける

どの言語でも、この「第三者からのダメ出し」が大事なんだなと改めて思いました。独り言で完結してしまうと、間違いに気づけず、誤った方向に突き進んでしまう。だからこそ、いわゆる「ネイティブ脳神話」につながっているのかもしれません。

また、「聞き流す」勉強法についても、本書では注意が促されています。聞き流しに慣れてしまうと、実際の通訳の現場でも大事な情報を“聞き流して”しまうことがあるというのです。これは通訳者ならではの鋭い警鐘だと感じました。

「スピーキング・ファースト」のアウトプット勉強法

英語をはじめとする外国語教育では、「リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングをバランスよく学ぶこと」がよく言われます。ですが著者は、この「4技能バランス論」にも一石を投じています。

主張は明快で、「とにかくスピーキング・ファースト」。4技能を意識しすぎると、スピーキングが一番後回しにされがちだというのです。たしかに、英検でもスピーキングは2次試験にしか登場しませんよね。

本書では「インプットよりアウトプット」こそが学習の鍵とされており、「スピーキングが上達すればリスニングも上達するが、その逆はない」とも。自分が無意識に信じていた「4技能神話」に気づかされました。

では、どうやってアウトプットを鍛えるのか?
具体的に紹介されているのが「自己発信ノート」と「オリジナル単語帳」です。

自己発信ノート」とは、自分が発信したい内容を日本語で考え、それを外国語で書き出して、いつでも話せるように準備するノート。「まず日本語で考える」スタンスはここでも貫かれています。

以前に紹介した英検1級面接対策ブログでの「オピニオンピース」とも似ていて、やっぱり間違っていなかったんだと嬉しくもなりました。

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一方のオリジナル単語帳」は、自分がよく使いそうな単語、意味はわかるけれど使いこなせていない単語をストックしておくもの。表現の幅を広げつつ、高い瞬発力で言葉を発するためのツールとして紹介されています。

どちらも、ニュース記事などをネタ元にしていて、「ニュースの表現を自分の言葉でパラフレーズしていく」「自分のボキャブラリーになかった言葉も積極的に使っていく」といった活用法が示されており、私自身もぜひ取り入れてみたいと思いました。

大学の第二外国語でもなく、社会人となってから学習した言語で総理通訳に。もちろん著者は、外務省に入省されるほどの方ですから、もともと優秀だった面もあるでしょう。ですが、翻訳の仕事をしていながらもまだまだ自分の英語力強化の必要性を感じ、さらには他の言語への興味も尽きない私にとって、とても励まされる一冊でした。

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本書が気になった方は、こちらから購入できます。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

(このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。)

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