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【読書記録121】『外国語教育』

こんばんは。
月曜日は、英語や日本語に関する本です。

外国語教育についても青空文庫で

著作権切れの作品がテキストを取れる形で無料閲覧できるサイト「青空文庫」。金曜日の「翻訳に関する本」シリーズでは度々取り上げてきました。

そういえば、月曜日の「英語や日本語に関する本」シリーズでも取り上げられるような本やエッセイもあるのでは?と思い至って検索すると、やはり沢山ありました。

本日は、『外国語教育』を紹介します。以前紹介した『翻訳について』の著者・岸田國士(きしだ くにお)の語学教育に関する随筆です。

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「演劇界の芥川賞」とも言われる「岸田國士戯曲賞」は岸田國士を顕彰する戯曲賞だったんですね。毎年、期間限定で候補作品が無料で読めるので勝手に愛着を感じている賞です。

https://www.hakusuisha.co.jp/news/n12020.html

「外国語≠英語」は戦中から言われていた

しかし、わたくしの考へでは、従来のやうに、外国語といへばすぐ英語だと考へるやうな態度は捨てなければならない。

外国語教育』は1942年の発表です。岸田國士自身がフランス文学を学びフランス留学したこともあるのでしょうが、戦中の時代にも「外国語≠英語」が主張されていたのにはびっくりです。

さらに、「英語だけじゃなくて、日本が関わる国々の言葉にもっと触れていこうよ」とまで言っていて、これがまた興味深いです。

そして、中等学校全体を通じて、日本と関係のある諸外国の言葉を教へる、そしてどの程度の数にいづれの外国語を教へるかといふやうなことを、計画的にやつてゆくべきだと思ふ。また、日常生活を通じて日本人が触れる可能性のある外国語を、――これは新しい方法に依らなければならないと思ふが――例へば、各国語の簡単な発音だとか、同じ意味の言葉がそれぞれ国に依つてどう異るかとか、さう言ふやうなことを中等学校で教へるのも一つの方法ではなからうか。見分け方ぐらゐ覚えておくとずいぶん役に立つ。これは外国語にたいする知識を与へるための、いくぶん新しい方式であり、考へ方であらうと思ふ。

これってすごく今にも通じる考え方ですよね。たとえば、以前紹介した『事典 世界のことば141』でも、使用地域や言語的特徴を紹介していたけれど、ああいう視点が中学高校から育まれたら、語学だけでなく地政学的な知識や感覚も自然と身につきそうです。

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「外国語らしく」にこだわりすぎなくていい

岸田は『外国語教育』で、「その外国語のネイティブのように書けなくても、日本人らしい発想で、学んだ言葉を自由に使って独自の表現をすればいいし、それで高く評価されることもある」と言っています。

実はわたくしもフランス語で話したり書いたりするのは不得手でもあり、嫌ひでもある。そのために、フランス語の手紙を書くのが非常に厭やで臆劫であつた。ところが、必要に迫られたからでもあるが、こんなことではとても駄目だと思つて、思ひきり大胆に日本語の直訳みたいな文章で、手紙など綴ることにした。それから急に手紙を書く気持が楽になつたやうに思ふ。そればかりでなく、その手紙が却つて非常に面白いとほめられたことさへある。

もちろん翻訳となると話は別かもしれませんが、外国語を使う・学ぶ段階では、つい「正しく・ネイティブらしく」って意識しすぎてしまうもの。だけど、伝えたいことを“自分らしく”言えることのほうが、実は大事なんだなと改めて思います。

最後に、明治から昭和を生きた日本男児という感じが伝わってクスっとした箇所を引用しつつ、本日はここまで。皆さまは手紙でキスを送れますか?

例へば、ヨーロッパ人ならば、親しい情を表はすために、手紙の末尾に「接吻を送る」といふやうな言葉を記すけれども、日本人にはそんなことはとても気恥づかしくて書けない。そこで、そんな調子で書くよりは、やはり日本人らしく「頭を下げる」と書くはうが面白い。つまり「頓首」とやるのである。それで相手には充分意味も心持も通じるし、日本的な味も出るのである。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

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