こんばんは。
月曜日は、英語や日本語に関する本です。
日本語は「間違いやすい」でなく「つまずきやすい」
本日は、『つまずきやすい日本語』を紹介します。国語辞書編纂者の飯間浩明さんが、「つまずき」の発生メカニズムと、それをできるだけ避けるためのアプローチを紹介しています。Kindle unlimitedの読み放題タイトルです。
なぜ、ことばは「つまずきやすい」のか
鳥取出身のある男性は、彼女と食事中に「おなかふとった?」と聞いて、デートが台無しになったそうです(『毎日新聞』2008年9月28日付)。「ふとる」は、いっぱいになる意味の鳥取方言でした。
これはかわいそう……。私も随分前に「片付ける・収納する」の意味で「直す」を使ったときに「え、壊したの?」と怒らせてしまったのを思い出しました。方言って、もちろん面白かったり可愛らしかったりするのですが、特にすごく厄介ですね。
そんな地域だったり、世代や所属する集団など、様々な要素によって、「脳内辞書」は人によってバラバラ。だからこそ、コミュニケーションはつまずきやすい、前提となる相手の「脳内辞書」への理解を深める必要がある、と本書では解説しています。
辞書を使う以外に、ことばの誤解を防ぐ有効な手段は、「場数を踏む」ということです。身も蓋もない言い方ですが、実地にいろいろ経験するということです。
自分の脳内の辞書と、相手の脳内の辞書は、書いてあることが違います。でも、「この人は、どうやら、このことばをこんな意味で理解しているらしい」ということが、話しているうちに、だんだん分かってきます。人と話す機会を積極的に増やすことで、自分以外の人がどんな脳内辞書を持つかについて、理解が深まります。このことが、誤解の解消に有効です。
翻訳・通訳において関連案件や資料を読み込む作業は、「脳内辞書」のインストールとも言えますね。
「つまずき」をできるだけ回避するために
場数を踏む以外にも「つまずき」をできるだけ回避する方法として下記があげられています。
・念を押し、2度言うー話すとき
・相づちを打ち、質問するー聞くとき
・多義的なことばを排除するー書くとき
・声に出して読んでみるー読むとき
特に、「話すとき」の心構えが刺さりました。
話を伝える工夫を考えるためには、まずその準備段階として、「自分のことばは相手に伝わらないかもしれない」という危機意識を持つ必要があります。「自分の話し方はこれで十分だ。誤解する相手のほうが悪い」と考えているうちは、伝え方はうまくならないでしょう。
ことばを使う仕事だからこそ、ある程度は自分のことばに自信を持ってしまうもの。翻訳・通訳をする際の読み手や視聴者の想定と同じように、コミュニケーション相手の理解や目的の再確認を行いたいと改めて思いました。
年末年始、価値観が異なる人とことばを交わす機会が増える時期ですね。『つまずきやすい日本語』を知ることで、帰省あるあるや親戚あるあるで傷ついてしまうのも避けることができるかもしれません。スラスラと読めますし、移動中の一冊にもオススメです。
体も心もご安全に、良い年末年始をお過ごしください!
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