こんばんは。
月曜日は、英語や日本語に関する本です。
「日本人の英語」は昭和から変わっていない?
本日は、マーク・ピーターセン著『日本人の英語』のレビューです。
英語学習者にはおなじみ、『ロイヤル英文法―徹底例解』や『表現のための実践ロイヤル英文法』の共著者でもある著者が、日本語の特徴や日本人の気質を踏まえながら、主に書き言葉における“日本人特有のおかしな英語”についてユーモアを交えながら語っている一冊です。
冒頭では、著者が子どもの頃に読んだ日本製ラジオの英文説明書に「なんだか変だな」と感じたエピソードが紹介されています。そしてそれから40年以上たっても、「日本人の英語」に対する違和感は変わっていないとも。
そんな本書が出版されたのは昭和も終盤の1988年。それから平成を飛び越えて令和になったいまでも、「これ、今もあるよね……」と思わせられる指摘がたくさんでした。
「名詞にaをつける」のではなく、「aに名詞をつける」
本書は、日本人がつまずきやすい英語表現を、ユーモアあるエピソードとともに解説してくれていて、まるでエッセイを読むような感覚でスラスラ読めました。初めて読んだときは、「えっ、そういうこと!?」「なるほど、それでだったのか!」の連続でした。
日本時が苦手としやすい冠詞についても、「『名詞にaをつける』のではなく、『aに名詞をつける』」というのは、目からうろこが落ちる方も少なくないのでは。
ネイティブ・スピーカーにとって「名詞に a をつける」という表現は無意味である。英語で話すときーーものを書くときも、考えるときもーー先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞でなく、aの有無である。そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である。もし「つける」で表現すれば、「aに名詞をつける」としかいいようがない。「名詞にaをつける」という考え方は、実際には英語の世界には存在しないからである。
この他にも、単数・複数や関係詞といった、学び直したくなる文法トピックがぎっしり。古い本だからと敬遠するのはもったいない一冊です。
英語を書く日本人にも、英語を読む日本人にも
もともと科学系の雑誌に掲載されていた記事がベースということもあって、本書は技術系の翻訳者、とくに日英翻訳者の間で長く愛されてきた一冊です。私自身も「日英翻訳をやるなら、マーク・ピーターセンの本は必読」とアドバイスを受けたのを、今でもよく覚えています。
今回Audibleで聴けることを知って、久しぶりに再読(というか再聴?)したのですが、あらためて驚きました。英語を書くときに役立つのはもちろん、読み解くための視点――つまり解釈の軸になるような文法事項が、こんなに丁寧に語られていたとは!
「これは、英日翻訳者にも絶対役立つ!」と確信し、続編も含めてシリーズをもう一度、英日翻訳の視点から読み直そうとモチベーションが高まっているところです。
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