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【読書記録105】『翻訳する女たち:中村妙子・深町眞理子・小尾芙佐・松岡享子』

こんばんは。
金曜日は、翻訳に関する本です。

女性翻訳家の人生をたずねて

本日は、『翻訳する女たち:中村妙子・深町眞理子・小尾芙佐・松岡享子』を紹介します。以前投稿した『翻訳者の仕事部屋』の著者・深町眞理子さんも執筆されている昨年(2024年11月)発売の本と知り、読むのを楽しみにしていました。

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著者は、雑誌『翻訳の世界』の編集もされていたライターで編集者の大橋由香子さん。本書は、大橋さんが戦前生まれの現役女性翻訳者に行ったインタビューをまとめた連載「“不実な美女”たち──女性翻訳家の人生をたずねて」を元に構成された一冊です。

光文社古典新訳文庫
連載「“不実な美女”たち──女性翻訳家の人生をたずねて」の記録ページです 幼少期や少女時代に第2次世界戦争を体験し、翻訳者も編集者も男性が圧倒的だった時代から、半世紀以上も翻訳をしてきた女性たちがいる。暮らしぶりも社会背景も出版事情も

タイトルにもある中村妙子さん、深町眞理子さん、小尾芙佐さん、松岡享子さんの章に加え、著者・大橋さんによる思い出の回想として、加地永都子さん、寺崎あきこさん、大島かおりさんの話も収録されています。

戦中・戦後の生活だけでなく、たとえば「子どもが生まれるとき、生まれた子が男の子だったら父親の会社からお祝い金が出る」など、今とは大きく異なる女性の扱いに驚く話も。4人が翻訳をしはじめた頃も翻訳業は男性メインの職業でした。

そのような1920年代、1930年代生まれの女性翻訳者の軌跡を追う本書、性別を問わず今の現役翻訳者におすすめです。

読書する女たち

翻訳者の仕事部屋』を読んだときも思ったのですが、登場する翻訳者の方々は皆さん、本当に本をよく読まれている!

本書でも、翻訳者それぞれの人生は、まず「どんな本と出会ってきたか」から語られます。自分はこんなに本が読めているだろうか、幼い頃に読んだ本のことをこんな風に語れるだろうかと少し反省もしつつ、やはり出版翻訳に限らず翻訳者に「読書」と「読書からのアウトプット」は大事だと、改めて感じました。このブログ運営への意欲もぐっと高まっています。

本書に登場する数々の本のタイトルには、寡聞にして存じ上げないもの、タイトルだけは知っているもの、読んだ記憶はあるものの内容がおぼろげなものも。自分の不勉強さに苦笑いしてしまいますが、今後読む本リストが一気に膨らみ感謝です。

翻訳者の話を聞くこと

本書を読んでいて改めて実感したのは、「翻訳者さんの話を聞くのが自分は本当に好きなんだな」ということでした。将来的にフルタイム翻訳者を目指す人が多いなか、ディレクション業務もやっぱり楽しく感じていますし、翻訳者の集まる場も好きでよく出かけます。

本書の著者・大橋さんも関わっていらっしゃる『通訳翻訳ジャーナル』や『翻訳事典』といった媒体も、毎号楽しみに読んでいます。そんな翻訳者の人生が一冊にぎゅっと詰まった本書は、読みごたえたっぷりでとても楽しく読めました。

また、本書が出版される前に中村妙子さんと松岡享子さんが亡くなられたことに触れ、「はじめに」で著者が語る悔いの言葉にも心を打たれました。話を聞きたい人、会いたい人はいつも待ってくれるわけではないのだと、改めて思い知らされます。

これからも自分自身の翻訳作業を丁寧に続けていくと同時に、本を読んだり、人と会ったりしながら、自分以外の翻訳者さんの声に耳を傾ける機会を大切にしていきたいと思います!

***

本書が気になった方は、こちらから購入できます。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

(このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。)

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