こんばんは。
水曜日は、小説、エッセイ、漫画本です。
アフタヌーンティー騒動が落ち着きますように
大阪・関西万博の英国パビリオンが出す5000円のアフタヌーンティーがお粗末だと非難の声が出ていますね。金額はまあ「万博価格」と割り切れるとしても、確かに紙コップを使うのは……。
ただ、ここまでの騒ぎになるのも日本でのアフタヌーンティー人気ゆえでしょうね。本場の味や所作、知識に憧れる人も少なくないのかもしれません。
ひとりの英国好きとして事態が落ち着くのを祈りつつ、本日は『魔女たちのアフタヌーンティー』を紹介します。
紅茶の知識が触れる小説
この本、読み終わった後に巻末に記載された参考文献の数を見て納得したほど、随所に紅茶やアフタヌーンティーの知識がちりばめられています。フィクション小説でも、調べ物を入念にされたと思われる作品は信頼できて、個人的に楽しく読み進められます。
たとえば、アフタヌーンティーといえばの三段スタンド(スリーティアーズ)について。
「スリーティアーズは」宇津木が淡々と述べる。「テーブルが狭い場合の苦肉の策で、テーブルがゆったりしているのならば特に必要ないのです」
かつての工夫がルールや憧れになっているというのも面白いですね。ミーハーな私はやっぱり「スリーティアーズがあるとテンションが上がる派」ですが、こうした知識があると、お店での特別な体験だけでなく、日々のお茶の時間もより楽しめそうです。
ちなみに、スリーティアーズにがっつりおかずを乗せているSNS投稿を見るのも、密かな楽しみです(笑)。
紅茶も自分も、3分蒸らす
さて、本書の主人公は前屋敷 真希(まえやしき まき)、38歳。大手の不動産会社で営業をしていた真希は少し前に仕事で大きな失敗をして、データ入力の仕事に追いやられてしまう。
名誉挽回を狙う真希は、かつて他の営業員がアプローチしたものの成果を出せなかった“白金台の土地”に再び注目する。社内で『プラチナの魔女』と呼ばれる白金台の土地の持ち主を訪ね、“魔女“とその客人たちとの不思議なお茶会に通うようになる──というストーリー。
お茶会に参加するメンバーはそれぞれ悩みを抱えていますが、“魔女“は紅茶を使って「自分を癒やしてあげなさい」と伝えます。
辛くて辛くて、どうにもしようがないと思ったとき、お茶を一杯淹れてみてちょうだい。ゆったりした気持ちでお湯を沸かして、熱湯に茶葉を浸して、じっくり待つ」
スーはワゴンの下から黒い小さな缶を取り出し、彼に渡した。
「その数分間がきっと、あなたを癒やしてくれるはずよ」
紅茶を蒸らす3分間。作中では“魔女“がピアノでトロイメライを弾いたり、砂時計を使ったり。この時「じっくり待つ」がポイントのようです。お茶会では誰もスマホを見たりせず、話しだすのもできた紅茶を飲んでから。この「何もしない時間」も持つことが癒やし効果をグッとあげてくれるんでしょうね。
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本書を読んで、お店ティータイムがしたくなり行ってきました。“魔女”の教えどおり、じっくり蒸らしてゆっくり味わってきました(サーブしてもらった段階で蒸らしは終わっていたのに、つい(笑))。

(ミックスベリーとリコッタチーズクリームのタルトにアールグレイをあわせました)
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