こんばんは。
金曜日は、翻訳に関する本です。
翻訳者の大先輩に、背中を押してもらえた本
本日は『翻訳者の仕事部屋』を紹介します。インスタでフォローしている翻訳者さんが読まれていて、おもしろそうだなと手に取りました。読む翻訳者の輪♪
文芸翻訳者、深町眞理子さんのエッセイ集と「フカマチ式翻訳実践教室」との二本立て。右開きでは縦書きのエッセイが、左開きでは横書きの翻訳教室の記事が読める、作りも楽しい一冊です。
戦前生まれの翻訳者さんの話を聞いたり読んだりすると、自分の甘さや覚悟のできていなさを痛感します。好きと言ってしまうのは憚られますが、今回も読んで良かったな、大先輩に背中を押してもらったなという感触です。
翻訳者は、本を読んで、文章を書くこと
エッセイの冒頭では、翻訳学習や翻訳業務とは別に、読書や文章の執筆を好んでおこなうことの重要さが語られています。
何事でもそうだが、その道のプロになろうと思ったら、やはり好きでなくては長続きしない。では、翻訳のプロ、とりわけ文芸作品の翻訳者(ここでは英文和訳の)をめざす場合、好きでなくてはならないものとはなんだろうか?(中略)
正解は、本を読むこと、そして、文章を書くことである。
(中略)
たくさん本を読むことによって、美しいもの、良いものにたいする感性を豊かにすることはできる。人間にたいする洞察、想像力を養うこともできる。翻訳者を志望するひとは、ぜひともたくさん本を読んで、これらをつねに生きいきと保つことを心がけていただきたい。そうすれば、しぜんに文章力もつき、書くことがおもしろくなる。
(中略)
感性を研ぎ澄まし、想像力を働かせつつ読んで、はじめて生きいきとした翻訳をする素地ができるのである。
私の場合、「本を読む」「文章を書く」ことは、好きではあるものの、感性を豊かにできているとまではまだ全然言えず・・・・・・。それでも、「本を読む」「文章を書く」機会は作っていこう。やっぱりこのブログを続けて少しずつでも研鑽を積んでいこう!と改めて思えた読書体験でした。
フカマチ式翻訳4原則
「フカマチ式翻訳実践教室」では、深町さんの「私の翻訳4原則」が紹介されています。発売から四半世紀過ぎても、むしろAIやコスパ・タイパの波が来ている今はさらに、大事にしていきたい考えです。
第1条 外国語ないし、それを日本語に翻訳するという作業に謙虚さを持つこと。
第2条 物語の背景、作者の言わんとすることを的確につかむ想像力を持つこと。
第3条 日本語にたいするセンスを磨き、表現力を養うこと。
第4条 広範囲にわたる知識、教養を身につけること。
具体的にイマイチな訳とブラッシュアップした訳やエピソードが紹介されていて、既訳や機械翻訳を前にしても麻痺せずに、謙虚さや丁寧さを大事にしたいと改めて感じました。
そして、そんな原則は原著者や読者のためなのはもちろんですが、決して自分を縛る窮屈なものではなく、自分にもご褒美をくれるものでもあるとエッセイの方では語られています。例えば、調べ物に関しては下記のように。
最近、翻訳ミステリー専門誌で、さる評論家が怒っているのを見た。ある作品に出てくる映画の訳題がいいかげんだというのだ。本邦公開もされている映画だし、ちょっと調べればわかることなのに、と。まったく同感だが、反面“調べる楽しさを知らない”そうした翻訳者を、気の毒にも思う。私など、あれこれ調べて、推理して、最後に答えを掘りあてたときの楽しみ、もっぱらそのためにのみ、この商売をやっているようなものだ。
答え、掘りあてていきたい!
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