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【読書記録114】『大人の語彙力大全』

こんばんは。
日曜日はビジネス書や自己啓発本の日です。

社会人に必要な語彙力

語彙がなければ、伝えたいことが伝わらない、相手の気持ちを取り違えてしまう。語彙力はコミュニケーションの根源でもあるのです。
 では、どのくらいの語彙を持っていればいいのか。
 私は、社会人には社会人として必要な語彙の範囲があると考えています。
 この言葉を知らないと社会人としては“アウト”である、これだけ知っていればおおよそ問題ない、という範囲を独自に設定し、そこからセレクトしたものが本書に掲載した語彙です。
 私が考える社会人の語彙力の集大成と言っても過言ではありません。

社会人として仕事をしていると、「まあそうなんだけど、言い方がね……」という場面に出会うことが多々あります。一言で場が和んだり、逆にぎくしゃくしてしまったり──語彙の選び方ひとつで印象が大きく変わります。

本書より前に発行された同著者による『語彙力こそが教養である』が注目を集めたのも、適切に伝わる語彙を“知っていて・使える”力、つまり語彙力の必要性を感じている人が多いからかもしれません。

本日は、『大人の語彙力大全』を紹介します。ビジネス現場で使われる語彙を、単なる意味だけでなく、日本のビジネス文化のなかでの使いどころや古典的な背景とともに解説しています。言語の知識だけでなく、ビジネス力や古典の知識も増える一冊です。

真の語彙力とは、一歩踏み込んで考える力

本書では、下記の構成で沢山の用語が紹介されています。

・語句
・辞書的な意味
・ビジネスの場での意味合い解説
・古典での使用の紹介

たとえば、冒頭の「一般語彙・基本語」として紹介されている「善処」は、次のように説明されています。

善処(ぜんしょ)
【意味|適切に処置すること。】

「善い状況に処する」ということで、正しい対処をするという意味。ビジネスの相手から要望を出されて「善処します」と答えたら、相手は当然良いはからいをしてくれるものと期待します。容易に使ってはいけない言葉です。自身はないけれどいい返事をしておきたいと思うなら、「前向きに検討します」くらいがいいでしょう。反対に、相手に善処を求めたいときは、「なにとぞご善処いただきたく」と使います。「世間の批判に耳を傾けて善処すべきであろうと思う」(『敬語論』坂口安吾)という用例があります。

安請け合いにならないように「容易に使ってはいけない」という点まで踏み込むことこそが、真の意味での語彙力なのだと気付かされます。この踏み込みは翻訳でもかなり大事なステップですね。

本書はこのフォーマットに沿って淡々と進むので、Audibleで聴きながら移動や掃除をするのにちょうどよい構成でした。用例部分も、Audibleでは「用例として、~の『~』に、『~』があります」の形に変えられていて、耳から理解しやすかったです。

語彙力は気遣い力

実際のビジネスの場での使用法に触れていくなかで、「語彙力は気遣い力」だなと感じました。

海外や外資系企業で働く方にとっては、こうした言葉選びが少しむずがゆく思えるかもしれません。でも、気遣いや親切心につながる語彙の使い方は、個人的にはとても腑に落ちる考え方で、好感が持てます。

翻訳者の場合、直接レートがかかるのは原文の文字数やページ数、分数といった数値ですが、訳文以外のメールや訳注でも語彙力を意識して、丁寧な仕事をしていきたいと改めて思わされた一冊でした。

月曜日の「日本語や英語に関する本」ではなく、日曜日の「ビジネス書や自己啓発本の日」の紹介とした意図が伝わりますように。

***

本書が気になった方は、こちらから購入できます。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

(このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。)

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