こんばんは。
金曜日は、翻訳に関する本です。
日韓出版翻訳者の、波瀾万丈エッセイ
本日は『翻訳に生きて死んで: 日本文学翻訳家の波乱万丈ライフ』を紹介します。
昨年3月に発売され、何人もの翻訳者さんが「面白い!」とSNSに投稿されていて気になっていたのですが、ようやく読めました! 大好きな恩田陸さんの作品も日韓翻訳された方だと知って読む前から好感を持っていたのですが、エピソードも語り口も楽しい。ドンドン読み進められた一冊です。
分野や言語が違っていても参考になる点もたくさんで、お金や契約関連、健康やライフイベントなど、かなり赤裸々に紹介してくださっています。
飾らない文章こそ、人を魅了する
日本語訳のリズムやテンポがよく、楽しんで読めた本書。日韓翻訳者さんということもあって、最初はご本人が日本語で執筆されたのかと勘違いしてしまいました。韓日翻訳された翻訳者さんに腕があるのももちろんですが、ご本人のライティングポリシーが関係していそうです。
たくさん書いてみよう。文章は書けば書くほど上達する。
(中略)
そしてどうか、観念語や美辞麗句を乱発するカッコつけた文章にならないように気をつけて。文章が下手な人ほど、粋がった文を書こうとしてしまうものだ。
基本的に、私はカッコつけた文章や難しい文章、堅苦しい文章が嫌いだ。パソコン通信時代から最近のブログに至るまで、10年以上ネットに文章を書くことを楽しんでいるが、私のモットーは常に「無学な人でも楽しく読める文章を書くこと」だ。両親が私の書いたものを読むことはないけれど、基準はいつだって無学であるその2人だ。ハングルさえ読めれば誰にでも理解できる文を書くこと。
韓国語は分からない私ですが、きっと韓国語の原書も読みやすいんだろうなと感じました。韓国語が読める方は原書でもいいかも。ご感想教えてください♪
そして、私は技術や法律の文章で育ってきたのもあって、文章が硬くなりがち。改めて、書くときも訳すときも、引用した箇所を意識したいなと思いました。
実力とキャリアは比例しない
赤裸々に翻訳人生を語る本書。「仕事が途切れたとき」では、やや天狗になってしまって仕事が途切れたエピソードもありました。
知名度が上がって仕事がひっきりなしに入ってくるようになり、生意気になっていた時期が私にもあった。リーディングを依頼する電話がかかってきたら「ちょっと。私にリーディングを依頼するなんて」とムッとして(表向きは笑いながら「忙しい」と言い訳するが)、翻訳料金が安ければ断っていた、そんな時期。生意気な態度ばかりか、マンネリ状態に陥って成長もなく、校正紙はざっと見るだけという不誠実さまで三拍子そろった蛮行を繰り返し、フリーランサーとしての寿命を縮めていた。自覚はなかった。これまでと同じように過ごしていると思っていた。だんだん仕事が減ってきたのは、優秀な後輩がたくさん出てきたからだと思っていた。そうこうしているうちに、ついに!仕事が途切れた。(中略)
思いがけずぽっかり空いた時間を読書で埋めながら反省した。これからはどんな仕事でも最後の機会だと思ってがんばろう、謙虚に翻訳をしていた初心に返ろう・・・・・・。
こちら、翻訳をする立場としても、翻訳依頼側としても思い当たるところが。既訳や過去のチェックバックをリスペクトしないなど、意識がアウトプットに出ちゃう世界ですよね、翻訳って。
本書では続いて翻訳の仕事において、「なかでもいちばん大切なのは実力」と語られています。「実力」とは「キャリアとともに伸びていく、落ちることはない潜在能力」のように思いがちですが、実は「潜在能力・プロセス・プロ意識」の掛けあわせなのかもしれないと改めて思いました。
なんだか生真面目にまとめてしまいましたが、痛がゆいところもありつつ楽しく読める、翻訳者さんや翻訳志望者さんにオススメな一冊でした^^(←著者さんを真似した顔文字♪)
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