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【読書記録139】『国宝 上 青春篇』『国宝 下 花道篇』

こんばんは。
水曜日は、小説・エッセイ・漫画本の日です。

『国宝』はぜひ原作も!

映画『国宝』がついに興行収入100億円を突破しました。皆さまはご覧になりましたでしょうか?

美しい画面づくりや緊迫感のある舞台シーンは歌舞伎初心者でも魅了されました。ただ、先に原作を読んで大きく魅了されていた私としては、省略や改変にどうしてもモヤモヤする部分も。

なので本日は、「みんな、原作も読んで!」の回。吉田修一さんによる原作小説『国宝 上 青春篇』『国宝 下 花道篇』の紹介です。

Audibleの特別音声版は「聴く舞台」

原作小説は、映画と同じく主人公・喜久雄の中学生時代から還暦を超えるまでの50年以上を描いた上下巻の長編。まずその分厚さに圧倒されてしまう方も、そうでない方も、今回はAudible版での「耳から読書」がおすすめです!

歌舞伎俳優・五代目尾上菊之助さん(収録当時。現・八代目尾上菊五郎さん)による20時間越えの朗読は本当に贅沢。歌舞伎の舞台シーンはもちろん、映画以上に沢山いる登場人物の演じ分けが本当に素敵で、どんどん聴き進めたくなります。

上巻は21時間7分で、下巻は22時間2分とありますが、それぞれ「通常版」と「特別音声版」が両方収録されているため、実際にはその半分の時間です。

私のおすすめは断然「特別音声版」です。違いは朗読の声に反響があるかどうかで、BGMや効果音などはありません。ですが、まるで朗読劇を劇場で観ているかのような音響で、物語への没入感がぐっと深まります。Audibleは普段1.5倍速で聴く私でも、「これはノーマルスピードで聴かねば!」となりました。

菊之助さんのインタビュー動画(約7分)での収録時のエピソードや姿勢も興味深かったです。ご自身が演じていない演目の場面を朗読するにあたり、実際にその作品を演じた歌舞伎役者に事前に相談してから収録に臨んだことや、Audibleを聴く「読者」を一貫して「お客様」と呼ぶ姿勢にも、観劇好きの読書好きとしてなんだか嬉しい。

原作には「女たちと歌舞伎」がたっぷり

映画版に対しての私の一番のモヤモヤは、女性たちを本人への描写が少なめのままフェードアウトさせてしまっているところ。

喜久雄の育ての母をはじめ、映画では短い登場にとどまった人物にも、原作では魅力的なエピソードがたくさん描かれています。ぜひ原作を読んで「女たちと歌舞伎」に触れてほしい!

例えば寺島しのぶさんが演じた女将さん。喜久雄が原因で息子の俊介が家出した後も、憎しみを募らせないようにと別居を勧めつつ、喜久雄に娘が生まれたときには出産前後の母娘を自宅で世話するなど、複雑な愛憎を抱えたとても印象的な人物でした。映画では分かりやすさを優先してシンプルに描かれていた印象です。

さらに個人的に一番惜しかったのは、喜久雄の娘と、役を得るために喜久雄が近づいた大物歌舞伎役者の娘。この2人を途中でフェードアウトさせると物語の意味が変わってしまうし、特に前者については開き直った改変になっていて、好みが分かれるところだと思います。ある映画好きの友人は「映画のほうが分かりやすさはある」と評していました。

ジェンダー論などではなく、女性たちをそぎ落とすことで喜久雄と俊介という男性陣の厚みや人間味も削られてしまったような印象。やはり、いくら3時間弱と長尺でも一本の映画には収まりきれない大河ドラマなのが大きいですね。

個人的にはドラマ、それも朝ドラの形式が最適だと思うですが、朝ドラって女性主人公じゃないとやっぱり難しいですかね……。せめて映画でも全編後編の二部作にしてほしかった!

ひたすら綴ってきた原作愛が映画ファンの方にも届くと嬉しいです。ある観劇仲間は映画にハマった後に原作を読んで改めて世界観に夢中になったと話していたので、映画ファンの方も楽しめるはず!

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

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