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【読書記録126】『キッチン常夜灯 ほろ酔いのタルトタタン』

こんばんは。水曜日は、小説・エッセイ・漫画本の日です。

やってしまったけど、大丈夫!

以前投稿した、夜9時から朝7時まで営業するフレンチビストロのお話『キッチン常夜灯』。読み終わった後に、食事や仕事が前より楽しみになる感覚が好きで、続編を読むのを楽しみにしていました。

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ただ、やってしまったのが図書館で2巻を飛ばして3巻を借りてしまったこと。「あっちゃ~」と思いつつも、結果としては大丈夫でした! 主人公が変わっているので、なんなら1巻を読んでいなくても楽しめると思います。

作中素敵だなと思った女性・つぐみさんが2巻の主人公だと分かったときは口惜しい気分もありつつ、「これからつぐみさんの物語が読める!」とワクワクした気持ちも。

ということで、今回はシリーズ第3弾『キッチン常夜灯 ほろ酔いのタルトタタン』を紹介します。

少し仕事から離れて、誰かと話をしながら食事を

3巻の主人公は、森久保かなめ。1巻と2巻の主人公と同じく、チェーンレストラン「シリウス」を運営する株式会社オオイヌの社員です。レストラン店舗での仕事にやりがいを感じていたところに製菓工場へ異動となります。

その製菓工場は、元は「カモメ製菓」という別の会社。ある事件をきっかけにオオイヌに買収されました。ともに働く製菓部長・牧野は、元・カモメ製菓の社長で、いまはオオイヌの社員となったものの、新たなデザート企画にも他人事。そんな閉鎖的な製菓工場での仕事に焦りを感じているときに、かなめは「キッチン常夜灯」と出会って、といったストーリーです。

「常夜灯」で過ごすうちに、自分を取り巻く環境についての見方が変わってきたかなめ。彼女の気持ちの変化に、「仕事から離れる。誰かと話をする」ことの効果の大きさに改めて気づけます。

「・・・・・・私は午前七時からの勤務ですけど、早朝は隅田川が朝日に光っていて、とてもきれいなんです。夜明けが遅い冬はよけいにそう感じます」
「早起きした人だけが見られるご褒美ですね」
シェフの言葉にハッとする。そうかもしれない。あの煌めきは、製菓工場に異動するまで知らなかった。
「常夜灯」に来てよかった。心からそう思った。仕事から離れる。誰かと話をする。他愛のない話でいい。それが心の中にすうっと違う風を運んでくれて、やる気を起こさせてくれる。その上、同じ飲食店だからか、ハッとさせられることがたくさんある。自分が置かれた場所のこと、牧野部長のこと、柊太との再会、自分の仕事の捉え方。一晩でどれだけのことを違う確度から考えたことだろう。

同業者だからこその「ハッとさせられる」にも共感! 私も、分野が違う翻訳者さんや同業他社さんとの食事から気づきをいただいています。

やりがいは、案外皆が求めているのかも

「実力がありながら、それを発揮する場がないのも苦しいものです。」

本書では、牧野部長などのベテラン世代や、パート勤務の女性陣がやりがいを感じられなかったり、求めることに臆病になったりから閉塞感が生まれている描写、それがある出来事をきっかけにお互いのやりがいを作り合って事態がどんどん好転していく描写があります。

読んでいくうちに、これまで自分の中では「やりがい」という言葉が若さと結びつきがちだったのかも、と感じました。

世代や働き方に関わらず、「結構みんなやりがいを求めているのかも」「やりがいを感じられなかったり、求めることに臆病になったりすると、停滞してしまうのかも」。本書で得た改めての気づきを、これから大事にしていきたいと思います。

牧野部長やベテランパートさんが実はとってもチャーミングなことが分かった終盤も、テンションが上がった場面でした。その人の本来のチャーミングさを引き出せるのもやりがいは大きな要素なのですね。

(そして、ベテラン俳優好きとしては、特に牧野部長は、映像化されることがあれば渋めの演技派俳優さんをキャスティングしてほしい!)

五月病になりつつある方に特におすすめしたい一冊でした。

***

本書が気になった方は、こちらから購入できます。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

(このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。)

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