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【読書記録83】『【入門】翻訳家になりたい人へ 英語の楽しさ・翻訳の世界の面白さ』

こんばんは。
金曜日は、翻訳に関する本です。

「運命を変えた一冊」と聞いて

本日は『【入門】翻訳家になりたい人へ 英語の楽しさ・翻訳の世界の面白さ』を紹介します。

本書を手にとったのは、先日紹介した通訳翻訳ジャーナルの最新号『通訳翻訳ジャーナル2025SPRING』がきっかけです。「翻訳者リレーエッセイ」ページにて出版翻訳者さんが「運命を変えた一冊」と紹介されていて、とても気になったので取り寄せてみました。

わたしには「運命を変えた一冊」があります。それは、『【入門】翻訳家になりたい人へ 英語の楽しさ・翻訳の世界の面白さ』です。(中略)読み終えるころには「わたしも翻訳家になりたい!」との思いが芽生えていました。

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このタイトルを見て手にした人に「わたしも翻訳家になりたい!」と思わせる本。読み始めるうちに元気をもらえる一冊でした。

「翻訳家になりたくてなった人へ」としても

タイトルに加えて内容からも、翻訳(そして、翻訳のなかでも出版翻訳)に興味がある人から、プロデビュー目前あたり人までの「翻訳志望者」を想定読者にしていることがわかります。ですが、私としては、すでに翻訳の仕事をしている人にこそ読んでもらいたい一冊でした(さらには、出版以外の翻訳者にもオススメ!)。

本書のテーマは、「翻訳の面白さ」や「『翻訳の勉強』の面白さ」を伝えること。著者の片岡先生が「翻訳は面白いと感じている理由」をこれでもかと紹介しています。

好きだなと思ったのは、蟻とお砂糖の山の話。

まだ訳されていない原書がお砂糖の山だとすれば、翻訳者は、そのお砂糖の山をちょっぴりずつ崩していく小さな蟻だと思うのです。(中略)
日本語の山のほうは、作業開始の時点ではまだ存在していませんでした。その、最初はどこにもなかった山が、作業を終わってみるとそこにある。目の前にできあがったその山は、頑張って続けた労働の成果です。こんなふうに、一生懸命働いた結果が目に見えるのはうれしいものです。ある意味で、表紙に名前が出ることより、こちらのほうがずっとうれしいような気がします。

納期に追われ、完了して一息つくばかりだった最近。完了した自分の訳文を眺めることもしていきたいと思いました。

そして、「新しいことを知れる」というのも同感!

また、知的な刺激を毎日受けるのも、わたしにとってはうれしいことです。知らないことが山ほどあるわたしには、新しい本の翻訳がもたらしてくれる知識、情報がとても貴重なものに思えます。世の中には自分の知らないことがこんなにいっぱいあって、この上まだまだあるんだな、ようし、それならもっともっと知ってやろう、という意欲が湧いてきます。

翻訳する対象から「宝物」をもらえることも。

実をいいますと、わたしはひどいくよくよ型、取り越し苦労の名人です。それも、自分の分だけでなく、人の分まで心配して落ち込むのですから、たまったものではありません。それでも、『ポリアンナ』を訳しているときは、さすがのわたしの悪い癖もかなり影をひそめていました。今でもときどき、「さ、“うれしいことを見つけるゲーム”をしよう」と自分に言い聞かせることがあります。こうなると、架空の世界に遊べて楽しい、を通り越して、素敵な宝物を翻訳からもらってしまったことになります。

SNSなどで翻訳の仕事に対して否定的な意見を目にしていくと、心が折れかけることも。自分が好きなことに関して辛辣な意見は辛いですよね。本書は、決して甘くはないという記載もあるものの、「翻訳は面白い!」と言い切ってくれることで、「そうですよね、面白いですよね!」と元気がもらえ、全体を通してモチベーションが高まる一冊です。このモチベーションがあることで、訳文の品質も働き方もグッと良くなりそうという希望も持てます。

ただし、経済面など、甘くはない事情も踏まえておいた方がいいのも事実。ここは、翻訳とは何か: 職業としての翻訳』と本書とを両方読んでみて、厳しさも楽しさも知っていくなかで自分のあり方を模索するといいのかもと思っているところです。

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翻訳ミニレッスンで直訳からのブラッシュアップ

本書では、各章の終わりに「訳してみましょう」の翻訳ミニレッスンも。原文、状況説明、直訳例、訳し方のヒント、改訳例が列挙されています。辞書を引かずに読めるよう「語注」がついているのも嬉しいポイントです。

「直訳例」は完全な間違いとは言えないものの、状況やキャラクターにあっていなかったり、日本語はまごついていたりしています。イチから翻訳するときにも、機械翻訳のポストエディットをするときにも、ブラッシュアップのヒントになる点が沢山でした

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ある翻訳者さんの「運命を変えた一冊」である本書の著者、片岡さん。片岡さんも、あるとき書店で手にした雑誌『翻訳の世界』から翻訳への道へと運命が変わったそう。お二人に感謝しつつ、私も「運命を変えた一冊」に沢山(欲張り!)出会えるよう、色んな本を手に取ってみようと改めて思いました。

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本書が気になった方は、こちらから購入できます。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

(このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。)

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