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『逃げても、逃げてもシェイクスピア:翻訳家・松岡和子の仕事』草生 亜紀子 (著)

こんばんは。
水曜日は、小説、エッセイ、漫画本です。

朝ドラになってほしい!

先週、翻訳家が主人公の小説を取り上げて、「しばらくは翻訳家、翻訳者が出てくる本にしよう」と思い、すぐさま思いついたのが本書『逃げても、逃げてもシェイクスピア:翻訳家・松岡和子の仕事』でした。

松岡和子先生は、坪内逍遥、小田島雄志に続いて3人目のシェイクスピア全編を日本語訳された翻訳家。昨年参加したイベントでそのチャーミングさにファンになり、今年4月に発売された本書もすぐに購入しました。

満州からの引き揚げやお父様が捕虜になった話、随所にサラっと出てくるビッグネーム、シェイクスピア劇の描写や具体的な翻訳にまつわるエピソードも盛りだくさんの半生記。ミーハーな意味でも、大事なことがもっと世に伝わってほしいという意味でも、朝ドラ化を強く希望しています。

捕虜となった国の言葉を習得するということ

満州で生まれた松岡先生。お父様である松岡茂さんは、満州で事実上の長官だったため、戦争責任を問われ11年間もソ連で捕虜生活を過ごします。その間にロシア語を習得した鋼の意思のエピソードは、おそらくはポジティブな気持ちを持って母国語以外の言語を習得したであろう、今の時代の現役翻訳家・翻訳者には衝撃的。自分の覚悟の足りなさを感じるなどしました。

また、お母様の松岡幸子さんも、夫不在の状態で一家を支えるために英語教師として働き、英語力を磨くために毎晩ラジオの英会話番組を聴いていたとか。老人ホームにて英語で挨拶されると英語で返し、結果的に最後の言葉となったのが英語だったというエピソードも、考えさせられる部分が多いです。

逃げてもやっぱり「面白がってしまう」

翻訳の仕事をしていると、分野を問わず思いがけないところで出くわしてしまうものの一つがシェイクスピア。一人の読み手としてはクスっとしてしまうものの、その知名度の大きさから訳出に緊張もしてしまいます。

松岡先生もシェイクスピアから逃げようとしたこともあり、それでも結局シェイクスピアに行きついてしまう。それはきっと、戯曲や舞台、演劇に抵抗できない魅力があるから。底本にすると決めたもの以外にも手に入る限りの英文テキストを読み込んだり、舞台の稽古場に足を運んで訳文を練り直したりと、ご両親と同じく覚悟も感じます。

本書から松岡先生の「面白がりやであること」と覚悟に触れ、引き続き緊張はするものの、前より楽しく、気合いを入れて翻訳するようになりました。

試し読みできます!

yom yomサイトにて、本書の一部が試し読みできます。ぜひ!

①プロローグ
https://www.bookbang.jp/yomyom/special/feature/shakespeare/10253
(俳優、河内大和さんの「シェイクスピア道(どう)」のお話に共感!)

②「第四章 劇評・翻訳」より一部抜粋
https://www.bookbang.jp/yomyom/special/feature/shakespeare/10255

③「第五章 シェイクスピアとの格闘」より一部抜粋
https://www.bookbang.jp/yomyom/special/feature/shakespeare/10257

トークイベント映像もぜひ!

大好きなナショナルシアターライブ(NTLive、皆勤賞です!)で、松岡先生が参加されたトークイベントの映像も公開されています。

ラストの挨拶は、このときの作品(『ザ・モーティヴ&ザ・キュー』おススメです!)だけでなく、シェイクスピアや演劇全体に対しての思いかと。演劇作品に関わる方に届いたら嬉しいです!

世の中、今コスパコスパでしょ。演劇ほどコスパが悪いものはありませんよ。

でも、それでもなお、あれだけの才能が集まって、時間とエネルギーと場所とあらゆるものを使って、お客様にそれこそいいものを届けようって。

それこそ、それがアートなんだなって。そういうことも思わせてくれてね。もう、泣いちゃいます。

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