こんばんは。
水曜日は、小説・エッセイ・漫画本の日です。
(真夏日が続いていますね。最近は移動が増えたこともあり、ダウンしてしまいました。
ようやく回復したのでブログも元気に再開します。皆さまもどうぞお気をつけて!)
「5分文庫」始動していた
本日は、『本 vs 煙草 5分文庫』のレビューです。Kindleアプリでおすすめされて、表紙の「5分文庫」の文字に惹かれて手に取りました。
これは、ラルボー書房による「5分文庫」シリーズの第一弾。著作権保護期間を過ぎた海外文学の新訳を、スマホで5分程度で読めるようにまとめた作品です。
(このラルボー書房さん、公式サイトは持たず、X(旧Twitter)のみで情報発信。販売はAmazon Kindle限定の個人出版社とのこと。こういうスリムな出版社、今後ますます増えそうですよね。出版翻訳者さんにとっても、新しい販路開拓のヒントになりそうです。)
ごく短い良質な文章を、それ自体完結したものとしてスマホで読めるようになったら、きっと楽しいし、本との付き合い方にも一石を投じるものになるのではないか。そんな考えがあって、この『5分文庫』は生まれた。第一弾にこの『本 vs 煙草』を選んだのは、当然の帰結だった。
「訳者あとがき」にこう記されているとおり、分量も題材も、読書へのハードルをぐっと下げて、本をもっと身近に感じられる一冊でした。
本と煙草、どっちが高い?
『本 vs 煙草』は、イギリスの作家・ジャーナリスト、ジョージ・オーウェルが新聞に発表した文章です。
冒頭では、工場労働者たちによる、新聞の文芸欄への率直な感想が紹介されています。
「いやいや、ダンナ、そんなもの読むわけがないでしょうが。12シリング6ペンスもする本の話ばっかりじゃないですか。おれたちみたいな連中は、一冊の本に12シリング6ペンスもかけられませんって」
通貨も時代も違いますが、なんだか現代の日本でも聞こえてきそうなセリフですよね。
こういった声を踏まえて、オーウェルは自分が所有する本の冊数やかかった費用を試算し、さらに嗜好品――煙草やビールにかかる費用と比較し、下記の結論を導き出します。
本の値段を含め、すべての物価が上昇している時代ではあるが、それでも読書にかかる費用は、本を借りるのではなく購入し、かなりの数の定期刊行物を取っていた場合でも、喫煙と飲酒を合わせた費用を超えることはなさそうだ。
大がかりな価格検証への熱量、そして、そこまでやっておきながら「それでも煙草やビールのほうがいい」という人たちを論破しようとするわけでもない。真面目さが極まって逆にユーモアになっている感じに、思わずクスッと笑ってしまいました。
対訳研究にも使えそう
「5分文庫」シリーズは、著作権が切れていて、しかもサクッと5分で読めるボリューム。これは翻訳者や語学学習者にとって、対訳研究の題材にもぴったりです。
『本 vs 煙草』も、英語原文がインターネット上で公開されています。テキストはコピペも可能なので、自分で原文と訳を並べて表にしたり、本書の訳文と比較してみたり。力がつきそうな素材です。
▶ 原文はこちら
https://orwell.ru/library/articles/cigar/english/e_cigar
ちなみに「5分文庫」シリーズ、すでに21冊も出ているとのこと。これはもう、読みたいリストがまた一気に増えてしまいました。
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