こんばんは。
日曜日は、ビジネス書の紹介です。
表現者も「ビジネス」
そもそも、僕にとって漫画家という職業は「仕事」だ。
ひとつのビジネスとして、ある意味では割り切って描いているし、それが悪いことだとはまったく思っていない。
よく、仕事について「自分を表現するもの」のように考えている人がいるが、それは大間違いである。
仕事とは「他人の需要に応えるもの」だ。
自分を表現するとか、そんなふわふわしたことを言っているようでは、いつまでたっても仕事にならない。
他人の需要に応えられなければ、お金にならないのだ。
知識や能力のレベルを棚にあげ、ついつい「アーティスト思考」になりやすい自分を自覚しているからか、0から1を生み出すクリエイターであり、地に足のついた考えを発信している方の本を読むのが好きです。
本日は『個性を捨てろ!型にはまれ!』を紹介します。Kindle Unlimitedの読み放題タイトルです(投稿時点)。前回、『徹夜しないで人の2倍仕事をする技術三田流マンガ論 ─三田紀房流マンガ論─ 』も紹介した『ドラゴン桜』などで有名な三田紀房さんによるビジネス書です。

とにかく「型」を見極め、実践する
本書では、三田さんも読者も含め「ほとんどが凡人」だと言ったうえで、凡人が成功するための秘訣を紹介しています。
どうすれば手っ取り早く、合理的に、そして確実に成功を手にできるのだろう。
才能?
そんなもの、大して重要じゃない。(中略)
とにかく、キレイに舗装された高速道路を走ることだ。
近道はウロウロと捜しまわるものではないし、自分で果敢に切り開いていくものでもない。あらかじめ誰かが整備してくれた道路を、猛スピードで走り抜ける。それに勝る近道はないのだ。
通訳・翻訳の場合は「キレイに舗装された高速道路」が見えづらいという障害は正直なところあると思っています。
ただ、以前あるプロの通訳者さんが「ある程度のリサーチや体験入学はしたけれど、自分が通った通訳学校以外の学校にも魅力的な点はあったかもしれない。それでも、規模感が近いならば誤差の範囲だと思って、自分がここと決めた場所でどれだけ真剣に取り組むかだと思う」と話していたのを思い出しました。
色んな入り口がある業界だからこそ迷いがちですが、そこで迷いを断ち切って「猛スピードで走り抜ける」ことが大事なのでしょうね。
そして、一定の「型」「基準」をクリアできていれば、まずはいい意味での見切りをつけるというのも重要な考えだと思いました。
僕の漫画を読んだことのある人ならわかるだろうけど、プロの漫画家として考えたときの僕の絵は、はっきり言って下手だ。アマチュアの中にも、僕より上手な絵を描ける人はゴマンというだろう。ただ、漫画誌に載るために必要な最低限のレベル、読者に受け入れてもらうだけの最低限のレベルはクリアできていると思っている。
だったら、あとはストーリーやキャラクターの魅力で勝負すればいい、というのが僕なりの結論だ。画力に関しては、いい意味での見切りをつけていて、合格点が取れればそれで十分なんだと思っている。
語学系の方は真面目で欲張りな印象もあって、「通訳・翻訳の仕事をするんだったら、あれもできなくちゃ、これも……」となることも。もちろん、ここでいう画力を追求するのも美徳ですが、まずは必要な要素それぞれの合格点を取ることが先ですね。
恐れず驕らず、素直に王道を選ぶ
本書では、「対立→葛藤→和解」という漫画の王道を紹介しつつ、王道に乗り切れない漫画家について言及しています。
漫画家を志す人たちの中には「自分は個性的なんだ」という自負心が強いせいか、素直にこの王道を選べない人がいる。(中略)
由は簡単で、王道にのっとったストーリーは単純に面白いのである。読者にしても、風変わりな漫画を求めているわけではなく、ただ面白い漫画を求めているはずだ。むしろ作者のエゴばかりがちらつく作品なんか、少なくとも僕は読みたいと思わない。
翻訳者にとっての意訳問題にも通じる話のような気がします。そもそも、翻訳をしようという話になるくらい、原文や原作は興味深い素材。素直に原作の言葉が表す意味を採用したいですね。
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教育問題や国民性などにも踏み込んでいて「ここまで言っちゃうのか!」とドキドキしてしまう部分もあり、好き嫌いは分かれるかもしれません。ですが、たとえ嫌悪感や抵抗感をもった人も「グヌヌ……!」と納得せざるを得ない、成功哲学がある一冊でした。
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本書が気になった方は、こちらから購入できます。
投稿時点では、AmazonではKindle Unlimitedの読み放題タイトルです。
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