MENU

【読書記録72】『続 窓ぎわのトットちゃん』

こんばんは。
水曜日は、小説、エッセイ、漫画本です。

「トットちゃん」のその後の成長物語

私が体験した戦争のことを書き残しておきたいと考えたことが、『続 窓ぎわのトットちゃん』を書くきっかけの一つだということも、このあとがきに書いておきたかった。

本日は『続 窓ぎわのトットちゃん』について投稿します。前作『窓ぎわのトットちゃん』は、戦争が始まり、トットちゃんが疎開に向かうところで終わっていました。続編である本作は、11歳から38歳までのトットちゃんこと黒柳徹子さんの成長物語です。

「トットちゃん」と戦争

前作と同様、徹子さんが振り返っているというよりも「トットを主人公とした物語」として描写されている本作。戦争に関する話も子ども目線だからこそ心にのしかかってくる部分があります。

「おまえ、なんで泣いてるんだ?」
トットは手で涙をぬぐいながら、
「寒いからです」
と答えた。するとおまわりさんは叫んだ。
「戦地の兵隊さんのことを考えてみろ! 寒いぐらいで泣いていてどうする。そんなことで泣くな!」
あまりの怒りようにトットはびっくりしたけど、「そうか、戦争のときは泣いてもいけないんだ」と思った。 「叱られるのは、やだ。泣くことも許されないのが戦争なんだ。寒くて、眠くて、おなかがすいても、泣かないでいましょう。だって、兵隊さんはもっともっとつらいんだから」
それが、トットにできる精いっぱいのことだった。

素直なトットちゃんが、おまわりさんの言うことをきいて「精いっぱいのこと」をしようと決断するのが切ない。

戦地へと向かう兵隊さんの見送りではスルメがもらえたそうで、当時は無邪気にスルメを喜んでいたトットちゃんも成長するにつれて、スルメ付きの見送りを後悔します。

トットが日の丸の小旗を振って兵隊さんを見送ったのは、スルメの足が欲しかったからだ。でも、兵隊さんたちは旗を振るトットのことを見て、「見送ってくれるこの子たちのために戦うんだ」と自分に言い聞かせて、戦地に赴いたのかもしれない。
もしそうなら、そしてその兵隊さんが戦死したなら、その責任の一端はトットにもあるはずだし、スルメ欲しさに「バンザーイ!」と叫んだトットは、兵隊さんの気持ちを裏切っていたことにもなる。
大人になってから気づいたことだけど、この日の丸の小旗を振ったことをひどく後悔した。どんな理由があっても、戦いにいく人たちを「バンザーイ!」だなんて言って見送るべきではなかった。スルメが欲しかったにしても、トットは無責任だった。そして、無責任だったことがトットが背負わなくてはならない「戦争責任」なのだと知った。

憧れのハイカラ生活

心に重くのしかかる話もあれば、大笑いやクスクス笑いをしちゃうエピソードもたくさんな本作。食糧難や疎開といった事態になる前や、戦後のトットちゃんのお家の生活には読んでいるだけで「素敵!」と憧れる部分も。

トットの家の食事メニューは、どうやら、よその家とはちょっと違っていた。まだ戦争の影響がそうでもなくて、食料が手に入っていたころ、家では洋食が基本だった。朝食は決まってパンとコーヒー。パパは毎朝、木製の四角い箱の中にコーヒー豆を入れると、金属製の取っ手をグルグル回して豆を挽いた。ガリガリガリ! コーヒーのいい香りがした。パンにもお決まりがあって、洗足の駅前のパン屋さんが、毎朝できたてを配達してくれる。外側が少し固い、お尻の形をした丸いフランスパンが、パパのお気に入りだった。

アニメ映画『窓ぎわのトットちゃん』をご覧になった方は、かなりの確率で「ガストースター」にときめいてしまったのではないでしょうか。

(東京ガスさんのサイトからお借りしました。かわいい~♡)

自分自身の子ども時代や当時の食事にもなんだかんだ満足しつつ(特に、魚介や山菜に関してはかなり贅沢させてもらいました♪)、子どもの頃はもちろん大人になっても、お嬢様の生活というものにやはり多少は憧れてしまう。当時としてはかなり珍しかったであろう開けた考え方のご両親の姿も含め、「素敵だな。真似してみたいな」と思う生活や考え方、言葉もたくさんでした。徹子さんのお母様のエッセイも読まなきゃ!

***

トモエ学園の小林先生の「君は、本当は、いい子なんだよ」という言葉をずっと大事にしているトットちゃん。大人になってからも、同じく個性を見つけて大事に育ててくれる人たちに出会います。個性が強く周囲から浮きがちだったり、ついつい働きすぎちゃったり。そんなときにトットちゃんやトットちゃんの周りの人たちはどうしたか。前作のファンはもちろん、前作は未読の現代の社会人にもおすすめの一冊でした。

***

本書が気になった方は、こちらから購入できます。
投稿時点では、AmazonではAudibleの聴き放題タイトルです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

(このサイトはアフィリエイト広告を掲載しています。)

コメント

コメントする

目次