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【読書記録160】『翻訳ワークショップ』

こんばんは。
金曜日は、翻訳に関する本です。

2025年の翻訳に関する本

2025年も、AIの脅威が多く語られるなかでも、個人的には気になる「翻訳者による、翻訳に関する本」が複数出版された年でもあったように思います。AIがあるからこそ、文章力がある人の文章が求められているのでしょうか。

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本日の一冊は、翻訳家・金原瑞人さんの『翻訳ワークショップ』。
同じ金原さんの『翻訳エクササイズ』を入門書とするなら、こちらは実践編、そして上級編にあたる一冊でした。

短編を1本すべて訳すときの頭のなか

本書の後半は「実践編」と銘打って、Red Serlingによる短編“The Midnight Sun”を題材に、「1本すべて訳すときの頭のなか」が紹介されています。

内容は細かくブロックを区切って、ブロックごとに下記の構成で進みます。

・「本文」英語原文
・「注」訳す際の要注意箇所や工夫のしどころ
・「試訳」金原さんによる試訳

「注」には、『名文で学ぶ英語の読み方』のような文法や構文の解説はほぼなく、翻訳文としての落としどころの解説が中心です。そのため、英文読解の基礎にはすでに到達している人向けの、やや上級者向けの本という印象を受けました。

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その分、ある程度の読解力が身につき、直訳からの脱却や、より自然でこなれた翻訳を学びたい読者にとっては、帯に書かれているとおり「すべての翻訳者が長らく求めていた超実践的翻訳指南書」と言えそうです。

私は今回、読書として読んでいきましたが、自分でも実際に訳したうえで「注」を読み、「試訳」と見比べ、最後まで訳しきったあとに改めて全文を完成させるーーそんな「ワークショップ形式」で取り組むと、本当に力がつくだろうなと感じました。
欲を言えば、こういった題材のときは、購入者限定ページなどで原文テキストがコピーできる形で公開されるとうれしいところ。権利関係が難しいのでしょうか……。

AIの活用法も

基本編では、「AI翻訳の可能性と限界」という章もあり、とても興味深く読みました。複数のエンジンを使い比べ、その違いを吟味しつつ、他の翻訳者から聞いた活用法なども紹介されています。

実際には使わずに「AIなんて使えない」と語る人よりも一歩踏み込んだ意見が多く、「これは真似してみよう」と思える活用法もありました。「対話型AIには、訳させるより解説させる」という考え方は、私自身もまさに実践している方法だったので、読んでいて思わずうれしくなりました。

いずれにせよ。対話型のChatGPTの場合、「日本語に訳して」と頼むより「どういう意味か説明して」とか聞くのがいいようです。

おすすめは、後半の“The Midnight Sun”の全訳も含めて一度本書を読了したうえで、改めてこのAIについての章を読み返すこと。金原さんが翻訳の際に注意しているポイントや、取りたいアプローチのうち、どこまでをAIは担えて、どこからは現状まだ手が届ききっていないのか。その境界を意識しながら、自分の翻訳プロセスにどうAIを取り入れるか考えたいと思いました。

そして、AIが台頭してくるなかでも、翻訳の面白さは忘れたくない。そんな気持ちを改めて思い出させてくれる一節を引用して、本日はここまで。

 じつは実家が印刷屋だったので、昭和の活版印刷、ガリ版印刷、タイプ印刷、写植・オフセット印刷の盛衰を細かくみてきました。そしていまや、印刷そのものが不要な電子書籍、電子文書が普及してきました。印刷業界で、職を失った人々はぼうだいな数にのぼるはずです。  翻訳業界も同じ道をたどるのかどうか、まだなんともいえません。しかし、翻訳そのものの楽しさがなくなることはないはずです。

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この記事を書いた人

企業にて、産業翻訳の翻訳、チェック、ディレクションに従事。
フリーランスにて、映像翻訳と読書ブログ運営。
観劇と、ヨガ・ピラティスが好き。

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