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『占』(木内昇 (著))

こんばんは。
水曜日は、小説、エッセイ、マンガ本のシリーズでお届けします。

占い、お好きですか?

皆さま、占いはお好きですか?

私は、神社に行くときは御神籤を欠かさず(結果が思わしくなければ「おかわりは1回OK」ルールにしています!)、雑誌では星占いはチェックします。
ラッキーカラーやアイテムなんかは割と素直に取り入れる、ゆるい占い好きです。

同じくゆるくミーハーな占い好きにも、実際に占い師に占ってもらったことがある人も、はたまた占いに否定的な方も、小説『占』(うら)を通じて占いや自分に潜む悩みに触れてみるのはいかがでしょうか。

本作の舞台は、大正から昭和にかけての日本。
「職業婦人」という言葉が使われ始めた頃ですね。
7人の女性たちが、様々な占いを通じて自分の歩むべき道を考える短編集です。

目次はこちら。

①時追町のトい家(ときおいちょうのうらないや)

②山伏村の千里眼(やまぶしむらのせんりがん)

③頓田町の聞奇館(とんだちょうのぶんきかん)

④深山町の双六堂(みやままちのすごろくどう)

⑤宵町祠の喰い師(よいまちほこらのくいし)

⑥鷺行町の朝生屋(さぎゆきまちのともうや)

⑦北聖町の読心術(ほくせいちょうのどくしんじゅつ)

一昨年、新聞小説『惣十郎浮世始末』でファンになった木内昇さんの短編集!
読みやすい文体で、時代小説が苦手な方にもおすすめです。

主人公が翻訳家♪

7編のうち、冒頭の1編「時追町のトい家(ときおいちょうのうらないや)」の主人公は桐子(とうこ)さん。
なんと桐子さんは翻訳家なのです!

四年前に父が逝ってから、桐子はこの咲山町の一軒家に独りで住まっている。
三十女が独り住まいだなんて、と周りは哀れんだり訝ったりしたが、生まれ育った家は慣れ親しんだ親友のように居心地が良かったし、女学生の時分に夢中で学んだ英語を活かして翻訳の仕事も得ていたから暮らしに詰まることもなく、気ままな日々を楽しんでいたのだ。

さらに、3編目「頓田町の聞奇館(とんだちょうのぶんきかん)」の主人公である知枝(ともえ)さんは、桐子さんの家に英語を習いに行くのですが、知枝さんによる桐子さん描写も素敵。

学校以外の時間まで勉強に費やす羽目になったことにはうんざりしたが、咲山町に通うことはすぐに楽しみのひとつとなった。
桐子の家が、知枝の今まで知り得なかったハイカラで知的な香りに満ちていたからだ。部屋はいつも隅々まで掃き清められていて、趣味のいい置物や絵画がさりげなく飾られていた。仕事部屋は、茶の間や台所に比べると少し雑然としていたが、樫の木で作られた机や、洋書がぎっしり詰まった楔本棚は、うっとりとするような佇まいだった。桐子もまた、派手さこそないがいつも身ぎれいにして、縞の着物の着こなしも粋なら、白粉けのない肌も透明に澄んでいた。

エンタメ作品で翻訳者・翻訳家が素敵な人だという描写があると、とっても嬉しくなっちゃいます。
(おススメあったら教えてください!)

さて、そんな桐子さん、ある時から家にくるようになった男性との仲に悩み、占い師通いに大金を使いはじめてしまいます。
はたして占いをやめられるのか、男性との関係はどうなるのか……。

そんな1話目、無料で読めます!

https://www.shinchosha.co.jp/ura/

ぜひ、この1話だけでも読んでいただきたい!
ネタバレは避けるものの、後半に桃を一緒に食べた人物の言葉や、その後に机で仕事をする桐子さんの描写は、翻訳者・翻訳志望者は共感できるのではないでしょうか。

木内さんは本作についてのインタビューで下記のように答えていました。
何かに迷ってしまっている人に届いたら嬉しいです。

自分の中でこれだというものがあれば迷わずにいられるというけれど、そんなに人は強くない。
ゆらぎもあるということを分かっていた方が良い。

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